第12回「能力論 II :数値化される能力」
ルディア: | 今回は『能力論 II :数値化される能力』です。 |
ナイド: | 何というか、完全に「ゲーム的」だな。 |
Phant.F: | 間違いないね。「つよさ」の「数値化」というものは、ほとんどの場合においてゲームのために行われる。例外があるとすれば、能力をイメージを伝え、共有するという場合くらいか。 |
ルディア: | 古今東西、様々なゲームがあり、そのゲームごとに能力は数値化されていると思います。特に重要度の高いものは何でしょうか? |
Phant.F: | それがまた、難しい。数値化とは、多くの場合「つよさ」の「差別化」なんだ。そのゲームがどのように「つよさ」を表現したいかによって、それはまるで変ってしまう。 |
ナイド: | 極端な話からすると、たった1つの「戦闘力」などという数値のみで定義するケースもあるからな。高いほうが勝つ。実に単純だ。 |
ルディア: | それってゲームになるのですか? |
Phant.F: | トレーディングカードゲームあたりに、案外そういうのあるからね。戦力をその場に集中させたり個々の能力を使ったりなどして一時的に「戦闘力」を上下させる事で深みを出す。 |
ナイド: | 戦力の集中と言えば、将棋など、言ってみれば全ての駒のHPと攻撃力は1で、機動力だけで「つよさ」が差別化されているという表現もできるからな。ただそれだけの差別化で、あんなにも奥深い。 |
Phant.F: | それらがただ1つの数値の差別化だけで奥深いのは、それらが「戦術」重視のゲームだからねぇ。それこそ、駒の「つよさ」の差別化が一切なくても「戦略」重視で十分に奥深いゲームは存在できるし。 |
ルディア: | では、様々な能力値が定義されるゲームなどは何を重視しているのですか? |
Phant.F: | 「戦闘」。1対1〜少数対少数の、戦闘行動選択の駆け引きには、1ユニットに対してある程度の数の差別化された数値が欲しい。まあ「戦術」重視のゲームである程度の数の能力値があるのもそれはそれで価値があるけれど。 |
ルディア: | では「戦闘」重視に焦点を当てたうえで、特に重要度の高いものは何でしょうか? |
ナイド: | 最重要と言えば、「どれだけの損害を与えられるか」「どれだけの損害に耐えられるか」。この2点に尽きる。 |
Phant.F: | そしてここから細分化が始まる。剣と魔法の世界なのだから、「武器でどれだけの損害を与えられるか」「魔法でどれだけの損害を与えられるか」「武器に対してどれだけの損害に耐えられるか」「魔法に対してどれだけの損害に耐えられるか」。 |
ルディア: | 何かまだ、直接的ですね。「ちから」とか「すばやさ」とかはいつ出てくるのですか? |
ナイド: | それはここからだな。「武器でどれだけの損害を与えられるか」を決定づける根拠として、「より強い力で叩きつける力を持っている」「より正確に攻撃を叩き込む技を持っている」「より威力の高い武器を持っている」など、それっぽい理屈を付けていく。 |
Phant.F: | 「武器に対してどれだけの損害に耐えられるか」を決定づけるに際し、損害を与える方の根拠と吟味しつつ、同じように理屈を付けていく。「より頑強な肉体で何度受けても倒れない」「より軽い損害になるよう打撃を捌く技を持っている」「より強固な防具で損害を軽減する」などのように。 |
ルディア: | 「ちから」が出てきましたね! 「すばやさ」はどうですか? |
Phant.F: | 「すばやさ」なあ・・・あれはとても解釈の難しい概念なんだ。だからゲームによってブレも大きい。 ターン制によくある「行動順」の元になってみたり、損害を与える側である「行動回数」の元になってみたり、損害を抑える側である「回避力」や「防御力」の元になってみたり、汎用性が高まる「移動力」の元になってみたり。「行動順」や「移動力」の元になってたりすると、その価値って計りづらいから、「ちから」と同程度の価値の「すばやさ」がどの程度のものなのか、とても定義しずらい。 |
ナイド: | 「行動順」の価値は相手が格下であるほうが高まる傾向にあるので、「格下に強い盗賊系」に持たせるには向いているといえば向いている。 |
ルディア: | 同じ程度の数字は同じ程度の価値、というのは必須なのでしょうか? |
Phant.F: | 場合による。第一に、そのほうが分かりやすい。ただ、能力値がクラスにより固定されていたりする場合は、クラスごとのバランスがある程度取れていればいいので、能力値の数字そのものが等価値である必要はない。厄介なのは、能力値を割り振れるようなゲーム。そこには能力値の等価値が要求される。 |
ナイド: | よほど入念に電卓を叩かない限り、上手くはいかない事を付記しておこう。 |
Phant.F: | そしてここに戦闘以外で使う能力値が入ってきたりすると、もうわけがわからなくなる。自分は「知覚力」ってのが結構好きな能力値なのだけれど、不意打ちの防止とか罠の発見とか、やっぱり価値計算がとても難しい。 |
ルディア: | 盗賊系能力は価値計算が総じて難しい、とはいつもおっしゃっている事ですね。 |
Phant.F: | 術師も難しいっちゃ難しいのだけれどねぇ。リソースが限られていることで、どれだけ1回の行動を強力にするか。強力にしすぎると、「リソースが万全の敵」として出たときにヤバい事になるし、あまり強くないとリソース管理の面倒な術師なんていらない、って事になってしまう。 |
ナイド: | 話が散らかってきたので、そろそろまとめに入ろうか。 |
Phant.F: | 各自イメージを膨らませて頑張れ。あと電卓は叩こう。 |
ナイド: | またその手の結論か! まあ、これも正解の無い手合いなので仕方が無いのか。 |
ルディア: | 抽象化の話なので、全てを表現しようとせず、ある程度の割り切りとこじつけで乗り切るのも大切ですね。 |
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composed by Phant.F
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