第13回「剣技と魔術 I」


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ルディア: 今回は『剣技と魔術 I』です。
ナイド: 何やら無理やり付けた感のあるタイトルだな。もう少し何とかならなかったのか?
Phant.F: 何とかしようとすれば何とかなったかも知れないが、それで何を論じようとしているのかが分からなくなるくらいなら、これでいいだろうと。
ルディア: ファンタジーを表す『剣と魔法』に対応した技術であるところの、武器技を表す『剣技』と、法術を表す『魔術』ですか。
Phant.F: 前の方の回で、リソースを削る事で切り札を切れるのが術師の強みであり役割であるという話があったが、戦士がリソースを削る『技』を使うとなると少々話が変わってくる。
ナイド: ふむ。戦士がリソースを削るとなると、それぞれの強みと役割が曖昧になるな。リソースを使わずにコンスタントに戦えることが持ち味と言っていた戦士が、切り札を打つようになるということだからな。
ルディア: では、それぞれの強みとは何でしょう?
Phant.F: それを論じるのが今回だな。『剣技』の強みと、『魔術』の強み、さらに言えば『魔法剣』の強みは、全て異なるモノであるべきだと考える。最近は「どれもあまり変わらん!」と思う事が増えてきたからな。
ナイド: 「何を選んでもそこそこ強い」は良い事だが、「何を選んでも変わらない」は良い事ではないな。どれでもいろいろ出来すぎるからそうなるのだ。もっとやれる事はそれぞれ限定されるべきなのだ。
ルディア: そもそも、『剣技』や『魔術』でできる事って、どんな事がありますか?
Phant.F: そうだな。その分類からが、それぞれの強みを表現する近道になるだろう。
Phant.F: 能動的な行動というのをまず大雑把に分けると、『攻撃』『回復』『強化』『弱体化』『強化の解除』『弱体化の解除』がある。
ルディア: 『攻撃』は相手にダメージを与える行動、『回復』は味方のダメージを減らす行動、ですね。
Phant.F: 「ダメージ」という表現も若干あいまいなのでもう少しかっちり言うと、『攻撃』は他者の「リソース」を減らす行為だ。それはHPリソースに限らない。
Phant.F: 『回復』は誰かの「リソース」を増やす行為だが、コストゼロの『回復』行為はあまり無いので、基本的には別のコストを払う「リソースの変換行為」になる。
ナイド: コストはコストであり、行動の結果とは切り離して考えるべきだな。行動の結果としては、『回復』は誰かの「リソース」を増やす、と言ってしまえば良いだろう。
ルディア: 『強化』は能力値を一時的に上げる、『弱体化』は能力値を一時的に下げる、でしょうか?
Phant.F: それだけでは不十分だ。『強化』は誰かに「有利な状態変化」を付ける。「状態変化」はアイデアの数だけあるので、ここで挙げ切る事などできないし、ひょっとしたら今日も新しい「状態変化」がどこかで生まれているかも知れない。
ナイド: 『弱体化』は誰かに「不利な状態変化」を付ける、だな。『強化』と紙一重だ。
ルディア: 「有利」「不利」の基準は何ですか?
Phant.F: 主観だよ。受けた者が有利と思えば有利、不利と思えば不利だ。聖剣伝説では、敵がプレイヤーキャラクター達に「武器攻撃属性を変更する強化魔法」を付けてくるが、敵がその属性に対する耐性を持っているため、結果的にプレイヤーキャラクターの攻撃力を下げる、というものがある。ナイドが紙一重と言ったのはそういうことだな。
ナイド: 『弱体化』となる「状態変化」もまた、さまざまなアイデアで日々発明されているからな。
Phant.F: サガの「スタン」とか、FFの「しのせんこく」とか、大発明だと思うんだよなぁ。いや、それらがそこが初出かは知らないんだが、なんにせよ凄いアイデアだよ。
ルディア: では、そろそろ本題に立ち返りましょうか。『剣技』『魔術』『魔法剣』が得意とする事は何か、です。
Phant.F: ぶっちゃけ『強化』『弱体化』はアイデアの世界だから、どれが何を得意とするか、定義しづらいところではある。強いて言うならば、『剣技』に入れやすいのは「自己強化」や「武器攻撃の追加効果による弱体化」であり、『魔術』については治癒魔術師が『強化』を副次的に得意とすると理由が付けやすく、攻撃魔術師が『弱体化』を副次的に得意とすると理由が付けやすく、『魔法剣』はそれ自体が自己強化である、と言ったところか。
ナイド: 『魔術』に関しては、その辺は趣味の領域だからな。『回復』専門や『攻撃』専門な術師と分けて『強化』『弱体化』を専門とする術師を作るパターンもある。まあ、なんにせよできる事をある程度分けた方が面白いし、完全に分けてしまわない方がたぶん良い。
Phant.F: 『弱体化の解除』に関しては、ほとんど『回復』と同列の役割分担にしてしまえば良いかなぁ。『強化の解除』に関しても、ほとんど『弱体化』と同列の役割分担にしてしまえば良いと思う。
ルディア: ではあとは、『攻撃』と『回復』ですね。
ナイド: 『回復』は、治癒魔術師の専売特許だろう。それ以外のキャラクターが回復技や吸収技を使う事が悪いとは言わないが、ごく少数に留めて治癒魔術師に花を持たせるのが吉だろう。
Phant.F: で、『攻撃』だ。これはさらに分類する必要がある。「物理近接単体攻撃」「物理遠隔単体攻撃」「物理範囲攻撃」「属性近接単体攻撃」「属性遠隔単体攻撃」「属性範囲攻撃」くらいには分けておこうか。
ルディア: 『剣技』『魔術』の最大の違いは「物理」と「属性」ですか?
ナイド: それは最もな事で、確かに重要な違いになるが、それを最大の違いにしてしまうと「やれる事に大差がなくなる」可能性が高くなる、とオレは考えている。それだけで違いを出すのは、とても難しい。
Phant.F: FEなんかはその差分を非常に上手く活用して成功している例なんだけれどねぇ。アレの魔術師の重装キラーっぷりは見事なものだから。
ナイド: オレは、『魔術』が得意な事は「範囲攻撃」であると考えている。だから『剣技』の「物理範囲攻撃」というものが最大の曲者だと考えている。
ルディア: よく見ますよね、『剣技』の「物理範囲攻撃」。
Phant.F: それがありふれているから問題なんだ。別に存在する事自体はいいんだが、それが魔術と同レベルの事までできてしまうのはどうなのか、という話なんだ。
ナイド: 『魔術』と差別化するならば、『剣技』の「物理範囲攻撃」は範囲が狭いか、コストが大きいか、威力が小さいか、であるべきだろう。
ルディア: では、『剣技』が得意とするのは何でしょうか?
ナイド: 「物理近接単体攻撃」であろう。逆に、『魔術』の「属性近接単体攻撃」「属性遠隔単体攻撃」で『剣技』の「物理近接単体攻撃」の威力に匹敵するものがゴロゴロしているのも問題であると考える。
Phant.F: 差別化を考えるならば、『魔術』で単体に対して効率よく『攻撃』ができる手段は多くしないべきだろう。低威力ならば効率よく単体攻撃できて問題ないと思うが、高威力になったときにどうしても範囲が拡大して対単体効率が悪くなるほうがそれっぽく感じる。
ルディア: では、『魔法剣』はどうでしょう?
Phant.F: 魔法剣士という存在にどうあって欲しいか、次第だな。瞬間最大攻撃力を誇るボスキラーになって欲しいのか、どんな敵に対しても有利に渡り合える汎用戦闘力になって欲しいのかで、得意なことが変わる。
ナイド: ボスキラーとなるならば、複数種類の「属性単体攻撃」を持ち、誰よりも高いコストを払う代わりに誰よりも高い打撃力を出せるようにすればいい。ザコとの相性は悪くなるが。
Phant.F: 汎用戦闘力となるならば、『魔法剣』は低いコストで「物理魔法両属性攻撃」を可能とし、相手の物理防御が高かろうが魔法防御が高かろうが関係なく斬れるようにすればいい。爆発力は無いが堅実だ。
ルディア: 長くなりましたが、そろそろまとめましょうか。
ナイド: 『攻撃』については、『剣技』は「効率よく強力な単体攻撃」、『魔術』は「広範囲に強力な範囲攻撃」を得意とする事が差別化への1つの鍵ではないだろうか。
Phant.F: 『回復』については、『魔術』の独壇場、それも治癒魔術師の専売特許とすべきで、それ以外のキャラクターが行えるのは限定的なものであるべきだろう。
ルディア: 『強化』『弱体化』はアイデア次第なので、ある程度役割を分けつつ、ある程度代用が効くのがいいでしょう。
Phant.F: 『強化の解除』は『弱体化』の役割を受け持った者の役目、『弱体化の解除』は『回復』の役割を受け持った者の役目とするのが自然ではないだろうか。
ナイド: 『魔法剣』は考え方次第で、上手い事役割を分けられると良いだろう。
ルディア: 以上で、この回を終わります。

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