第18回「罠」

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(暗殺者ナイド)トラップか‥‥オレ達は別に仕事でこれを仕掛けたりすることなど無いから、これは専門分野では無いな。
(ギルドマスター)だがお前は俺達の中では例外的にと言って良いほどその分野を訓練していたのでは無いかな?
(暗殺者ナイド)ああ、確かにそうですね、マスター。オレは自分の技術を使いながらにして自分の本職を隠して生活する方法を考えた結果、斥候、偵察兵あたりが適当だと思った。だが、それをやるにはその辺りの技術が足りていなかった。だから訓練したのです。
(ギルドマスター)なるほどな。しかし、ならば何故、18回にもなるまでこの分野が話題にのぼることが無かったのだ?
(暗殺者ナイド)それはオレ達の問題ではなく、オレ達を操る物の知識の無さゆえかと。奴は武器の方はそこそこの知識を持ち合わせているようだが、罠の方はほとんど知らぬようだ。
(ギルドマスター)ならば逆に、どのように話を展開するのだ?
(暗殺者ナイド)一般論だけで済ますしか無いかと。あとは有名な罠でも幾つか紹介するというのが妥当だろうか。あまりこの辺りの秘密事項は話したくない所でもあるから、好都合とも取れる。
(ギルドマスター)なるほどな。ならば、まずは「罠とは何か?」という所から始めてくれ。
(暗殺者ナイド)分かりました。まず、罠とは、ほとんどが自分がいない所で対象に攻撃、捕獲等を行う物だ。そのため、罠は大きく分けて2つのパーツがある。
(ギルドマスター)ふむ。
(暗殺者ナイド)1つは、罠を発動させるための部分。センサーのようなものでもあるな。もう1つは、相手に攻撃を仕掛ける部分。まあ、スネアやまきびし、ピットなどのように、直接的なものもたまにはあるか。
(ギルドマスター)一番簡単な罠だな。一度くらいは素の皆も作ったことがあるやも知れぬな、草を結んで転ばせる罠や落とし穴あたりは。
(暗殺者ナイド)で、一般の物に戻ると、2つの部分があるわけだ。パーツを2つに分けるのには、見つかりにくくなるというメリットがある。応用次第で様々な組み合わせがあるが、そういうことは抜きにしよう。
(ギルドマスター)うむ。
(暗殺者ナイド)その、いわばセンサーの部分は、相手に触って貰わねばならない。少なくとも物理的な罠(魔法を発動の条件にすることもまれにある)ならな。だから、必然的に足下や扉に設置することが多い。
(ギルドマスター)足下ならば床がそのままスイッチになっていたり、糸が張ってあったりするな。
(暗殺者ナイド)糸は少し厄介でね、例えば暗い所で黒い糸を張れば、目元にだって張れる。たまに無いですか?蜘蛛の巣が髪の毛に絡んでしまったりしたことが。あれと同じ理屈だ。
(ギルドマスター)あれは確かに罠だな。では、扉の場合はどうなのだ?
(暗殺者ナイド)扉はいろいろな仕掛けが出来る上に、探索者から隠すことができるから外すにはもっと厄介だ。まあ、詳しいところは企業(?)秘密だ。
(ギルドマスター)ふむ。ならば、攻撃を仕掛ける部分はどうなのだ?
(暗殺者ナイド)これは逆に、頭上に仕掛けることが多々ある。これも見つかると「ここには罠がある」と言っているようなものだから、あまり注意されないところや、室内なら調度品と一体化していたりするな。
(ギルドマスター)シャンデリアが落ちてきたりするやつか。
(暗殺者ナイド)それですね。あとは、穴を見つけたなら矢などに注意すべきだな。それさえも見つかりにくく作ってあるが。
(ギルドマスター)つまるところ、罠に気を付けようと思うなら、足下に細心の注意を払いつつ、そのほかの所にも良く気を配れ、ということか。
(暗殺者ナイド)そうですね。あとはやはり、経験ですか。何とは無しに「ここは怪しい」というのが分かるようになってきますね。
(ギルドマスター)なるほどな。
(暗殺者ナイド)ただ、過信はできない。例えば、音が鳴るだけでもそれは立派な罠になりうる(アラームという奴だ)。細心の注意を払っておきながら扉を軋ませてしまったが故に死にかかった奴をオレは知っている。
(ギルドマスター)そうか。罠を相手取るのに、気を付けすぎるという事は無いのだな。では、今回はこの辺りにしておこうか。ご苦労だったな。『闇夜の風』。(第18回・終わり)

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