feeling 1-page stories #08


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雪の結晶/儚い妖精
   − Snow fairy with Fragile cristal −

はじめまして。
わたし、雪の妖精です。

こうして冬の間だけ、雪と一緒にこの辺りを訪れることができるのです。
最近はちょっと、この辺りには来にくくなりました。
それがちょっと残念です。本当はもっと早く来たいのですけれど。

――え、何故か、ですか?
それはですね‥‥
えっと‥‥
‥‥会いたい人が、いるのですよ。
親切にしていただいた方がいるのです。

きっとその人は、覚えていないと思うのですけれど。


ところで、いきなりでごめんなさいなのですが‥‥
1つ、お願いがあるんです。
聞いて、いただけますか?

――えっとですね‥‥
‥‥。
‥‥‥‥。
‥‥わたしを、抱きしめて欲しいのです。
あなたの熱で、わたしが溶けてしまっても構いませんから。

――いえ、わたしは妖精ですから、溶けても死んだりしませんよ。
わたし達の世界に戻るだけですから、安心してください。

お願いです。あなたの温もりを、わたしに、ください。
‥‥結ばれないことなんて、分かっていますから。
せめて、ひとときの幸せな時間が、欲しいのです。


わたしの心が恋焦がれて、それで溶けてしまう前に――。


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-- Piece of Phantom --
composed by Phant.F