feeling 1-page stories #06


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色眼鏡/単色の世界
   − Monochrome world through a Colored glasses −

せわしい街の時間が、私を追い抜いていく。

誰かと一緒にいるときは、別に気になったりはしない。
そういう時は私も、そんな『街の時間』を創り出す側だから。
でも、1人の時は‥‥その流れに、取り残された気分になる。

そんなある種の熱に浮かされた人達にとって、今の私は『背景』に過ぎないだろう。
ならば私も、この街の全てを『背景』にするだけ。
私はバッグから色付きの眼鏡を取り出し、ゆっくりと、かけた。

瞬間、街は急速に熱を失った。
――いや、実際には、私がそのように感じただけなのだけど。

色眼鏡越しの世界は、熱を感じられない静寂の世界。
ちょっと見え方が変わるだけなのに、とても褪めた世界に見えてしまう。
私の思考も、同調するように醒めていく。

色眼鏡越しの世界は、色を失った希薄な世界。
実際には色が無くなるわけではないけれど、全ての色が感情を揺さぶらなくなる。
せわしかった街は、まるで深い眠りについたように静かになった。


街は何も変わっていない。変わったのは、私の受け取りかたのほう。
だったら眠ったのは、街ではなくて、私の感情のほう。

感情を眠らせた私は、せわしく街を歩き出した――。


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-- Piece of Phantom --
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