feeling 1-page stories #05
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雨の音/窓際の椅子
− Rainy day, Look out of the Window −
サアァァァァァ‥‥
閉め切った窓のガラス越しに、雨の音が聞こえる。
長そうな雨だ。今日一日は、止みそうにもない。
そんな外の景色を、彼女はぼんやりと眺めていた。
僕の部屋に1つしか無い、窓際の椅子に座って。
僕は布団に寝転がり、そんな彼女を見ながら雨の音を聴いていた。
「これじゃあ、今日は遊びに行けないね。」
外を眺めたままで、彼女が言った。
表情は読み取れないが、声からはちょっと残念そうな響きがする。
「そうだね‥‥。」
僕もそのままの姿勢で、彼女のつぶやきに答えた。
そしてしばしの間、黙り込む二人。
薄暗い部屋を、雨の音だけが満たしていた。
先に口を開いたのは、彼女だった。
「今日、どうしよう?」
振り向いた彼女の表情は、やっぱりちょっと残念そうだった。
「どうしようね‥‥。」
僕は考えながら立ち上がり、彼女の隣から外を見上げた。
空には重い色をした厚い雨雲。ああ、間違い無くこれは長雨だ。
彼女の方に向き直ると、返事を待っている顔があった。
「遊びに行けないのは残念だけど――」
僕は一度言葉を切って、彼女の頭を軽く撫でた。
「たまにはゆっくり時間を過ごすのもいいんじゃないか?」
彼女は撫でられるのに少しくすぐったそうにした後、ちょっと考える仕草。
そして僕の方を見上げると、柔らかい微笑みを浮かべた。
「そうだね‥‥。」
彼女から返ってきたのは、僕の言い方にそっくりな肯定の言葉。
僕らは2人で笑い合うと、長いお喋りに花を咲かせるのだった――。
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composed by Phant.F