feeling 1-page stories #03


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赤い雨/災禍の刃
   − Blood Rain brings Mortal Calamity −

雨が降る。
――赤い、雨。
錆びた鉄のような匂いのする、どろりとした雨。
そう、それは‥‥血の雨。

その雨の中心にあるのは、一振りの禍々しい刀。
それは大量の血を吸い、吸い切れない血を雨の如く撒き散らしていた。


この刀を振る者に、すでにまともな意思は無かった。
いや、まともな意思を持つ事が辛すぎるために、それを閉ざしていた。

最初に手にしたのは、彼女が絶対の危機に瀕したときだったか。
あるいは、彼女が何を犠牲にしても護りたかったものの‥‥?

最初はこの刀に感謝した。


しかし、血を欲するこの刀は、何度でも血の雨を降らす呪いの刃。
やがて持ち主に、人斬りの欲望を強制した。

それは抗い難い狂気。
そして一度抜こうものなら、刀が満足するまで納まることは無い。

彼女ならばその狂気にも打ち勝つ事ができただろう。
‥‥一度もその刃を自らの意思で抜いた事が無かったならば。


はじめのうちは、敵を斬った。
それで何とか治まった。

本格的な狂気は、彼女の友人を斬った時に始まった。

最悪の不運によりついには親をも斬り‥‥


最後の抜刀で、最愛の人を‥‥
何を犠牲にしてでも護りたかったはずのものを‥‥
その手で、斬った。


「もう‥‥疲れたよ‥‥」

刀は無慈悲にも、彼女から狂気を奪った。
彼女は自らの意思で刀を握りなおし‥‥

自らの身体に、深く突き立てた。



全てを奪う、魔性の刃。
それは今でもどこかで、新たな血を欲している‥‥


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-- Piece of Phantom --
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