feeling 1-page stories #01


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紅い三日月/死神の鎌
   − Crimson Crescent like Death Scythe −

ザッザッザッザッ‥‥!

足音が迫る。
その足音から逃げるように、わたしは走った。

ハァ、ハァ、ハァ‥‥

息があがる。もう走れないと、身体がわたしに伝えてくる。
それでもわたしは走った。

ズシャアッ!

次の瞬間、わたしの身体は地面を滑っていた。
もつれた足をぬかるみに取られてしまったみたいで、
痛かったことより汚れてしまった事の方が嫌だった。
でも、立とうとして気付いた。
痛くない程度で済んだのではなくて、
脚の感覚が無くなってしまっていたという事に。

わたしは全てをあきらめて、せめて星空でも見ようと、
仰向けに転がった。

昏くてわずかに紅い空。
見上げた瞬間わたしは、ぞくり、とした。

夜の空に怪しくたゆたう月。
それは血のように赤く、刃のように鋭い三日月だった。

わたしにはそれが、血に染まる大鎌のようにみえた。
こんなに月が怖いと思った事は、今まで無かったと思う。
今だからそんな風に思うのだろうか?それとも――


そしてそれは振り下ろされ、
彼女の身体から熱を永遠に奪い去った。


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-- Piece of Phantom --
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