冒険者に捧ぐ100の言葉 に挑戦

A-PL様のサイト 右手で君を、左手で誰かを。 様よりお題を拝借致しました。


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Scene.001 君の旅立ち
私の旅立ちを、私単独で語ることはありません。
私の旅立ちの時とは、すなわちアステリアお嬢様の旅立ちの時です。お嬢様の旅立ちの事を、従者である私が細かく語ることは致しません。ただ、不幸なことに旅立たざるを得なかった、とだけ。

しかし幸運なことに、アステリアお嬢様は『冒険者』の資質として、十分な聡明さと知識に加え、魔術と槍術に秀でておられました。とはいえ、それだけで生き延び続けられるほど、その世界は甘いものではありません。お嬢様に降りかかる災禍を払う盾となるべく、私は元々修めていた護身術をもとに格闘術を昇華し、いかなる状況でもお嬢様を守る護衛術を修めるに至りました。

ですがそれでもまだ、危険はあらゆる角度から忍び寄ります。そのような搦め手の危機に対処すべく、私は過去の因縁を持ち出して風変わりな剣士を一味に引き入れました。ナイドと名乗っているその男は、いかなる感覚をもってしてか、不意打ち狙撃騙し討ちなどたちどころに見破り、相手を私やお嬢様の得意な状況へと叩き落す能力を持っています。
そうしてこの3人が、今の旅の一味になります。

申し遅れました。私の名はカティア。アステリアお嬢様の従者にして護衛にして旅の仲間、誰が言い出したのか“従鬼”のカティアなどと呼ばれています。3人とも種族は人間なんですがねぇ、この一味は。

Scene.002 地理
「土地の形から読み取れるものはいろいろあるよ」とはお嬢様の言葉ではありますが、私達3人はおそらくそれぞれ違うものを読み取っているでしょう。

アステリアお嬢様は博物学的に、予測される気候や天候、その土地に足りているもの不足しているもの、などから仕事のネタを推測したり、仕事や旅の日取りに悪天候を避けたり、といったことを読み取っていますね。
ナイドはおそらく、その土地がどの方向から攻め込まれる事に弱いか、対処するにはどのような方法があるのか、などという事を考えているのではないでしょうか。

私は・・・その辺りのことは2人に任せて、どんな穀物がよく育ちそうか、どんな肉や魚がよく獲れそうか、などということを予想してその土地の名産の食事にありつく事を考えたり、入手できそうな保存食に当たりを付けておいたり、などという事を読み取っています。

食事については基本的に私が一手に引き受けておりますので、他の2人に比べれば殺伐とした役割ではありませが、妥協はできないところです。

Scene.003 流派
流派と言ってもさまざまな事柄には流派がありますが、ここでは私達の戦闘術に関する話を致しましょうか。

アステリアお嬢様の戦闘術は『魔槍術』であり、槍術と魔術を組み合わせることに主眼を置いているという、稀有であり、また複数の才能を要する、とても難しいものです。しかし修得した際の戦闘力、こと戦闘汎用性には目を見張るものがあり、距離の遠近、範囲の広狭への対応力、弱点属性を乗せた強力な一撃など、およそあらゆる敵を撃破せしめる能力があります。

私の戦闘術に関しては少々話しておりますが、格闘術と、『練気術』という・・・魔術体系と便宜的に申しておきますが、魔力を利用した体術、と言った方が近いでしょうか。肉体を強化する事を得意とし、主に自身の身体を頑丈にする目的で使用していますが、お嬢様の狙撃の際に視覚を強化したり、損傷した肉体を修復したりする事ができるなど、意外と汎用性もあり重宝しています。

ナイドは、腕のいい剣士ではありますが、剣術そのものに目を見張るものがあるわけではありません。真に恐ろしいのは、彼の隠密術と剣術が組み合わさった時。防御・回避の動作をしない相手への一撃は、たやすく致命的なものになります。しかしナイドは、その戦闘力はあくまで副産物だと言います。彼の最大の能力は危機察知・危機回避能力であり、不意打ちはそれを利用した能力に過ぎない、と。

こうしてみると、それぞれが違うものに対応できる、割とバランスの良い組み合わせではないでしょうか。

Scene.004 舶来
舶来、という言葉で思い浮かぶのは、『舶来品』でしょうか。
舶来品というと、さまざまな珍しい品物、というイメージですね。遠い国の特産品、といいますか、とにかく異文化のもの、というニュアンスを含む言葉に思えます。

私の記憶にあるものとしましては、異国のドレスですかね。いえ、私が着用したものではなく、お嬢様がお召しになられたものです。お嬢様の、ウェーブのかかった透き通るような金髪と、そのドレスの、一言では言い表せない多層の青色の調和は、思い出すだけでも胸が焦がれます。その多層の青色はお嬢様の瞳の青さにも似て、お嬢様の白磁のような肌と・・・
――いえ、これ以上は自重致しましょう。
そのドレス以外にも、お嬢様の魅力を引き立てるさまざまな品物に心躍ったものです。

今はというと、旅先で様々な品物を見かけますが、荷物は限られるため、身を飾るものの所持も限られます。最近の事ですが、試着だけでも、と、お嬢様に着せようとしたものを逆に私に着せられたのには参りました。まあ、お嬢様が楽しんでみえたので、それはそれで良かったとしますが。

Scene.005 意味
うぬぼれているつもりは無いけれど、この旅の意味は3人の中でわたしが持っていると言っていい。

カティアはわたしを護衛し、わたしの旅を少しでも快適にするために、わたしの旅に付いてきているようなものだ。とてもありがたいことに。あんなにできた従者を得る機会が今後訪れる事はまず無いだろう。
ナイドも同じようなものだ。わたしの旅の危険を減らすために旅に同行している。カティアがどうやって招き入れたのかはいまいちわからないが、わたしとカティアに不足した技術を埋めてくれるのはとても助かる。

しかしわたしの旅に、明確な意味があるわけでもない。ただ、帰るべき場所を失っているだけだ。
だから気の済むまで旅を続け、一番気に入った土地を定住地にすればいい、くらいに考えている。

まあ、旅の意味など旅の終わりに後付けするものだと思っているし、今はそれでいいんじゃないかな。

Scene.006 密航
旅の途中で密航が必要になったとしたら、それは相当に困難な旅であろう。
幸いオレは経験が無いし、アステリアにも無いだろう、となれば彼女に付き従うバトルメイドたるカティアにも無いだろう。

密航は、それこそ何日も館に忍び込み続けているのと同じようなものだ。いや、おそらくそれより大変であろう。いかにオレが様々な隠密技術を持っていたとしても、可能な限り避けたい。どうしてもとなった場合、最初から協力者がいる状態を作り出すか、はたまた最初から水夫に混ざるか・・・それでもバレたらサメのエサと相場が決まっている。たとえ大金を積まれようと、そんな仕事は御免被るな。

やはり海の上では、大金を積んででも客人でいるに限る。

Scene.007 海原
海原を進む旅路は、少ないですが経験がありますね。
「海を行くならば、大金を積んででも客人でいろ」というナイドの言葉に従い、そこそこ稼いで上客として乗った船は比較的快適ではありました。幸いなことに、3人とも船酔いに悩まされる体質では無かったようです。

海の上では、アステリアお嬢様は遠くを見つめていることが多かったように思います。新しい土地に思いを馳せていたのでしょうか。
ナイドは少なくとも表面上は、何も変わらなかったように思います。もっとも、彼が普段と違うことを考えていたとしても、それを読み取ることは難しいでしょうが。

私はといえば、長く客人でいるということに慣れませんでしたね。することも少なく落ち着かないといいますか。なので普段あまりやらないゲーム盤などに興じてみたりしたものです。

船旅は、やはり食料と水が大きな問題になりますね。食料は用意してもらえたので大して気になりませんでしたが、そうでなければかなり気を遣う事になったでしょう。飲み物も、どうしてもお酒ばかりになりがちです。そんな状態であれこれ気を配りたくないとなれば、なるほどナイドの言葉にも納得です。

Scene.008 来世
わたしの一味は現実的な奴ばかりで、来世について深く考えることはしない人間が揃っていてね。
ナイドに至っては興味の欠片もないだろう。そんな考え方もあるのか、程度のものだろうね。
カティアはどうだろうか。彼女も今現在を重視するタイプだから、自分の先を見据えることはあれど、その向こうを見ることは無いんじゃないかな。

わたしも、深くは考えないね。今を生きることこそ大事だから。
それでも思考実験代わりに思いを巡らせるとしたならば・・・
今世では返せないほどの恩を受けたカティアに、来世にまで渡って恩を返せるのならば、来世というものがあっても悪くないかもしれないね。

Scene.009 星座
星を繋いで神話と結ぶ、というのはなかなかロマンのある話だとは思いますが、私達が星を見るのは主に方角を知る時と、よく晴れた日で安全が確認できた場所の野宿くらいなもので、我ながら夢の無いものだと思いはします。

星を詠む者であればまた話も違うのかもしれませんが、あいにくとその手の術の使い手は私達の中にはいないので、星に大した意味を持たせる事もありません。
占星術師が未来を垣間見るとは、どのようなものなのでしょう。イメージが降りてくるような感性的なものなのでしょうか、はたまた様々な因果を読み取り、計算の果てに事象があるような理論的なものなのでしょうか。

一見不変のものに見える星も永久のものではないと聞きますし、星影の1つ1つに物語があっても、おかしくはないのかもしれませんね。星座とは、そのような物語の一部なのかもしれません。

Scene.010 残像
残像と聞いても、在りし日の幻、のような連想には至らず、残像が見えるように回避する戦闘術ばかりが思い浮かびます。
あ、私もできますよ、残像回避。

アステリアお嬢様に至っては、通常の戦闘技術による残像回避に加え、幻術魔法を利用した鏡像によるミスディレクション、などという高度な技術もあります。

逆にナイドは、3人の中でも最速の動きを持つはずなのですが、残像回避術を使っているのを見たことがありませんね。見破るのは相当得意ですから、自分が見破れる技を使いたくないというのはあるのかもしれません。本人に尋ねた事は無いので、実際の理由は不明ですが。

脚力強化術で速度や跳躍力を増加して、残像を残して上方に向かうと割と引っかかってくれるので楽しいんですけれどねぇ。

Scene.011 裏道
本来の意味の道としてのモノであれ、婉曲表現的なモノであれ、裏道は知っていればいるだけ役に立つものではあるが、だからといって常日頃から使うものではない。
裏道である以上、何らかの理由がある。知られていない、とても狭い、危険を伴う、金銭がかかる、使ってはならない、などなど理由は様々であろうが。

基本的に、知られている表の道の方が低コスト、言い換えれば楽なのだ。
ただし条件付きで、裏道のほうが楽になったり、裏道を使わざるを得ないパターンというのはある。
例えば、可能な限り誰にも知られずに移動したい、などという場合、裏道の方がコストが小さくなる場合が多い。
状況により、どちらを使うかを上手く選択する事でコストやリスクを下げる事ができるのだ。

まあ、裏道の使用と案内はオレに任せて、アステリアとカティアは胸を張って表の道を堂々と歩けばいい。

Scene.012 力
力と一口に言っても、実に様々なものがあります。
しかし、こと冒険者にとっては、自分の身に付けた能力こそが最重要となります。

なぜなら冒険者は、少人数で行動することがとても多く、人の力が借りられることが少ないからです。
権力や財力などは大きな力ではありますが、それは人の力を使えるということが前提であり、無人の荒野で己の身を守る役には立ちません。
そのような場では、己が研鑽を重ねた能力を拠り所とするしかありません。

ですが冒険者とはいえ、人と関わることはもちろんあります。
その時に最も重要な力と言えば――信用、でしょうか。
それは成功させてきた仕事の数々であり、認められた能力であります。
“従鬼”という二つ名など、女の身として持つのはどうかと思う事もありますが、それこそ私の力を知らしめる最たるものであり、冒険者という立場において非常に重宝しています。

とはいえ基本的に表立った交渉の類は、魅力あふれるお嬢様がこなしていきますので、私の出る幕は多くは無いのですが。私の力とは有事の際にこそ振るわれるものであり、平常時はお嬢様の周囲の環境を快適に保つ家事能力こそが最も使われるべき力なのです。

Scene.013 雷雨
雷雨は、旅をする上では面倒なものではありますが、それ以上のものではありません。

雷や稲妻を操る魔法はお嬢様が会得してみえますし、それ故に特性もわかっていますので、雷や稲妻を必要以上に恐れることはありません。
どちらかというと、雷雨は多くの場合は嵐であり、強い雨や強い風が伴うことが多く、それらの方がよほど問題になります。

基本的に、雷雨の時は出歩きません。
あらかじめ天候を予測し、街にいる場合は屋内に、旅の途中においては洞窟などにこもります。天候の予測はお嬢様が得意とするところで、雲の動きや風の流れ、果ては周囲の水の属性力の強さまで読んで、総合的に判断するのだとの事です。
あとはナイドの危険察知力でしょうか。何故か悪天候だけはよく当てますが、あれは理論なのか直感なのか、よく分かりませんね。経験則的なものなのかもしれません。

――え? “鬼”なのに雷とは無縁なのか、ですって?
荒ぶる天候とは神の威光であり、雷に関係するのは鬼は鬼でも鬼神の類ですよ。さすがに鬼神とまでは呼ばれていません。
まあ、お嬢様の力をお借りすれば、雷撃をまとった体術の行使は可能ですが・・・それを必要とする機会があるのかは、微妙なところでしょうね。

Scene.014 嘘
私やお嬢様が、冒険者を続ける上で、嘘が必要になる事はほとんどありません。まあ、ナイドが私達の知らないところでどの程度の事をしているかは分かりませんが。
最も彼の真髄は、本人も言うように、そういう類のものを感知して対処する能力です。彼とて全ての嘘を見破ることができるわけではありませんが、危機に直結する嘘、つまり相手が悪意を持って騙しに来ているような場合はことごとく対処していくのが不思議なところです。嘘そのものではなく、そういうところを察知しているのかもしれません。

とはいえナイドだけに全て頼っているわけではなく、特に聡明なお嬢様は、言葉の端々から僅かな齟齬を拾い集め、作られた話などを見抜きます。悪意無き嘘に関してはナイドよりアステリアお嬢様の方がよく拾い上げます。お嬢様はそうした意図をくみ取り、時にそれを尊重する事を選ばれる場合もあるので、実際には私が知るよりもっと気付いているのかもしれません。

冒険者か否かに関係なく、嘘とは重ねれば重ねるほど綻びるものです。なので可能な限り回数は減らしたいものですね。必要な場合は墓場まで持っていく覚悟で行使しますが、できれば身軽でいたいものです。

Scene.015 素材
冒険者の中には素材集めを生業としている人もいるくらい、素材というのは冒険者に縁があるね。
わたしの一味も素材集めはできない事はないのだけれど、専門にするほどの知識があるわけではないから、知識のある者の狩りや採掘に参加する、という事はたまにあっても、単独で請け負う事はあまりしないね。

ただ、皆がそれぞれにある程度のサバイバルスキルを所有しているから、旅の途中においては食材をそれぞれで集めてカティアが調理する、というのは割とやるかな。
たまに変な組み合わせになって、カティアが頭を抱えながら調理していたりするけれど、それもまた面白い事だと思うね。そういう事でもないとカティアが悩んでる姿など、そうそう見られるものでもないしねぇ。

まあ、カティア以外だと全部丸焼きしました、とかそんなのになるだけだから、旅のさなかでも素材を活かした美味しいものが食べられる事は本当にカティアに感謝だね。

Scene.016 異名
冒険者の文化なのでしょうか、ある程度名前が通ると、多くの人は異名でも呼ばれるようになります。

アステリアお嬢様の異名は、誰が呼び始めたのか分かりませんが、“茨姫”です。
お嬢様の美しさと強さが表現された、悪くない通り名だと思います。まあ、実際のお嬢様の強さは茨という程度では表しきれませんし、お嬢様の美しさはそんじょそこらの姫君が並んだところで引けを取らないものではありますが。
戦う姿がまた良いのですよ。魔槍を構えて射貫くような眼で敵を見据える姿など、思わず見とれてしまいそうになるほど、ほれぼれします。

私の異名は、何度か話に出ていますが、“従鬼”です。やはり誰が呼び始めたか分かりませんが。
まあ、鬼の如き強さと言うのであれば、名誉な事ということにしておきましょう。
もっとも私の戦い方は至極単純で、自己強化して文字通り殴る、それだけです。お嬢様の障害になるものは、文字通り全て叩き落すのが私の戦いです。
・・・そんな事をしているから、鬼などと呼ばれるのでしょうか。

ナイドの異名は、一応は“夜風”というものがありますが、私達の名前に比べてあまり通っていません。
冒険者の歴はナイドの方が長いくらいなので、少なくとも私達と同じかそれ以上に名前が通っていて然るべきだと思うのですが、あえて目立たないように立ち回っているのか、単に華が無いだけなのか、それとも私達の知らないところで名が通っているのか、いまいち不明です。本人もその辺り多くは語りませんし。

Scene.017 宴
冒険者たるもの、一稼ぎした時は宴を開くものだよ。
自慢じゃないけどわたしの一味は様々な仕事をこなして稼げるし、時には未知なる迷宮なんかの探索で一山当てる事もある。
だから、財布が潤った時はためらわずに使う。いい稼ぎの時は酒場の冒険者全員分わたし持ちで一騒ぎ、なんて事もするよ。

まあそれも、楽しみ半分、もう半分は、冒険者として長くやっていくためには不可欠な、他の冒険者たちとの間の潤滑油でもあるよ。必要経費ってやつだ。
幸い、助けてもらわなくてはどうしようもならない、という事にはまだなっていないけれど、稼ぎが良くても妬まれない、むしろ歓迎される、というだけでも悪い事じゃない。

宴の時のカティアは、それはもういい飲みっぷりでね。しばしば飲み比べを持ちかけられては、数々の強豪を打ち負かしてきたものだよ。それでもさすがに酔っ払わないという事は無くて、わたしに絡んで密着してくるようになるから酔ってると分かる。それもご愛嬌ってものだ。

ナイドはそういうのに反対するかと思いきや、むしろいいぞもっとやれ、という感じで、冒険の上でのメリットを感じているのかも知れない。いや、案外一番楽しんでいるのかも知れない。ナイドも酒を飲むことは好きだからねぇ。彼も独自の人脈があるから、ここぞとばかりに交流しているのかもしれない。

私は大体そういう時は主催扱いだから、それぞれの一行のリーダーと親交を深める事が多いかな。まあ、大体向こうから勝手にやってくるんだけれど。そこでいろいろ見極めたり話したりして、それぞれどんな一行かを大まかに知っておいたりはするね。あくまで楽しみついでに、だけれど。

何をするにせよ、楽しみを持っておくというのはいい事だと思うよ。

Scene.018 解毒
解毒の技術は『練気術』の中に含まれておりますので、私はある程度の毒であれば対応することができます。
『練気術』は魔力を利用して身体を強化させる事を主眼に置いた術式ですので、その解毒法は基本的には「生命体に備わった解毒力の強化」、端的に言えば代謝機能の上昇をもって毒に対処するものです。メジャーな方法の1つですね。
他の魔術体系には、物質を変換する術をもって無毒化したり、奇跡をもって毒を消し去ったり、攻撃的なものになると毒を攻撃して体外にはじき出す、なんていうものもあるそうです。

敵を倒しても毒は消えない、というのは大変やっかいな事です。大抵の脅威は、敵を倒せば収まります。攻撃は最大の防御、という言葉もあるように、敵が減れば脅威は減るのが普通です。ですが、毒の脅威は敵を倒してもなくなりません。腕力だけで対処できない脅威とは、それだけで恐ろしいものです。
まあ、肉体が頑強すぎて毒も効かない、などという脳筋な解決方法もあるようですが・・・さすがに私は術を併用しないとその境地には至れませんね。

Scene.019 楔
敵の陣地に切り込んで二分する事を、くさびを打ち込むという表現をするそうですが、アステリアお嬢様の魔槍術はそれを可能としうる強力なものです。
ですが私達は、多人数の戦場は経験していません。お嬢様の意向で、戦争には傭兵としても参加しない方針を取っているからです。戦争に参加する事があるとしたら、それは妖魔の軍団などとの戦いになるでしょう。
その際には、お嬢様の広範囲火力が存分に振るわれる事になるのでしょうか。私達が戦争に参加するのは望ましい状況ではありませんが、それはちょっと見てみたい気もしてしまいますね。

ただ、ナイドに関しては、私達の旅に参加するより前は、戦場の傭兵もやっていたと聞きます。戦場で不意打ちの能力が有効になる事は多くないと思いますが、どのようにして生き延びてきたのでしょうか。

私ですか?
私が戦場に立つのであれば、いつも通りお嬢様に向かってくる脅威を全て叩き落す事に徹することになるでしょう。
あるいは、近づくもの全てを殴り飛ばす鬼にでもなりましょうかね。

Scene.020 美食
カティアの作った食事は美味しい。

とか言うとそれだけで終わってしまうから、ここは冒険者として、美食家からの依頼についてでも語ろうか。

いつの時代にもお金と時間を持て余した人というのはいるもので、そんな人の中には並々ならぬ食への探求心を持つ人が一定数いてだね。そんな人達から、食材の採取であるとか狩りであるとか、とにかく何かを持ってくる類の依頼が出てくるんだよ。
大抵の場合、それらの依頼は高額の報酬であり、困難な内容になるね。素材の話の時にも触れたように、わたし達は採取は専門では無いから、単独で引き受けることは滅多にしない。狩りにしても、わざわざ単独で引き受ける危険を冒さなくても、山分けで十分な報酬があるからね。
そんな大型の狩りをするにあたっては、ナイドが目標を発見して居場所を見失わないようにする感知役、カティアが万が一に備えてパーティーを守る防御役、わたしが魔槍術で遠隔攻撃をする攻撃役、という役割分担になるね。なかなかいいチームだろう?

食に関わる依頼と言えば、もう1つ、旅する料理人の護衛、なんてのがあったね。本人もなかなか手練れで、護衛なんて要るのかな?なんて思ったりもしたけれど、道のりが思いのほかハードで大変だったんだよね。まあ、面白い仕事だったからいいんだけど。

Scene.021 薬

Scene.022 竜

Scene.023 噂

Scene.024 酒場

Scene.025 博打

Scene.026 鎮魂歌

Scene.027 怪物

Scene.028 通貨

Scene.029 影

Scene.030 現世

Scene.031 戦士

Scene.032 職業

Scene.033 薄明り

Scene.034 輪廻

Scene.035 年齢

Scene.036 痛み

Scene.037 禊

Scene.038 犠牲

Scene.039 淫祠

Scene.040 印

Scene.041 神話

Scene.042 技

Scene.043 財宝

Scene.044 運命

Scene.045 一族

Scene.046 君主

Scene.047 勇気

Scene.048 絆

Scene.049 情

Scene.050 獣

Scene.051 のどか

Scene.052 鍵

Scene.053 吟詠

Scene.054 幾年月

Scene.055 希望

Scene.056 占い

Scene.057 命

Scene.058 調教

Scene.059 馬

Scene.060 街

Scene.061 巷

Scene.062 探索者

Scene.063 刃

Scene.064 罰

Scene.065 翼

Scene.066 再会

Scene.067 古

Scene.068 英雄

Scene.069 器

Scene.070 罠

Scene.071 仲間

Scene.072 魔導師

Scene.073 市場

Scene.074 請け負い

Scene.075 異世界

Scene.076 礎

Scene.077 永劫

Scene.078 鱗

Scene.079 好敵手

Scene.080 誘惑

Scene.081 癖

Scene.082 生家

Scene.083 鍛冶

Scene.084 十字架

Scene.085 回想

Scene.086 憂い

Scene.087 悪戯

Scene.088 乱世

Scene.089 正邪

Scene.090 宿

Scene.091 道具

Scene.092 愚挙

Scene.093 預言者

Scene.094 闇

Scene.095 水

Scene.096 図式

Scene.097 狂気

Scene.098 郷国

Scene.099 雲

Scene.100 目的

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