二字熟語で100のお題その1 に挑戦

牧石華月様のサイト 追憶の苑 (ついおくのその) 様よりお題を拝借致しました。


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001:世界
それは1つしかなく、
それはこの世の全て。
それはとても曖昧で、
それはあまりに広い。

知覚できる全ての事を足しても、
認識できる全ての事を足しても、
想像できる全ての事を足しても、
1にはおよそ届かない。

それは当然のようにそこにあり、
私達は当然のようにそこにいる。

その上で小さな小さな私達は、
それを自分の中に抱えている。

002:輝石
全ての人がその輝きに魅了された。
全ての人がその煌きに圧倒された。

当然の事ながら全ての人が欲した。
しかしそれは、1つしか無かった。

最初は最も財力のある人に渡った。
次には最も権力のある人に渡った。
最後は最も武力のある人に渡った。

果てにあるのは、廃墟のみだった。

003:水鏡
不意に風が止み、水面が凪いだ。

静かな水面は、揺らいだ虚像を映した。

揺らぐ月。
揺らぐ星。
揺らぐ雲。
揺らぐ私。
揺らぐ心。

揺らいだ鏡が映すのは、静かな世界。

不意に風が吹き、水鏡は壊れた。

004:歌姫
音が響く。 それは、声。
声が響く。 それは、歌。
歌が響く。 それは、心。

心に響く言葉、心に響く声色、心に響く旋律。

どうして心に響くのか、本人に問うた者がいた。
彼女は一言、こう答えた。

「わたしはただ‥‥歌が好きなんです。」

偽りの無い、彼女の本心だった。
純粋であるが故に、人々に響いたのだ。

005:守人(もりびと)
彼らは、彼らの守るべきものの為、そこにいた。

それは、国を守るため。
それは、宝を守るため。
それは、場を守るため。
それは、人を守るため。

彼らの命と引き換えにしてでも。

今そこにそれらがあるのは、彼らがいた証。

006:契約
「ではこれで、契約成立だ。」

この後から、彼は何もかもが上手く言った。
何を選んでも、
何を言っても、
何を為しても、
全てが良い方向に向かった。

それこそが、契約の内容だった。

「期間は終わった。では対価を頂くぞ。」

彼は不利益を何も被っていない。
ただ単に、普通に成功も失敗もするように戻っただけだった。
しかし彼は、ほんの僅かに上手くいかないだけで苦悩した。

悪魔はさも美味そうに、その苦悩を啜った。

007:指先
細い指の手と、長い指の手。
2つの手の指先が触れ合う。
そしてそれらが絡まり合う。

優しい指先が、身体をすべる。
なぞるように、なでるように。
とろけるように安らいでいく。

体が気持ちいいのか、
心が気持ちいいのか。
それとも、両方‥‥?

心の動きは、体に伝わる。
繊細な心は、繊細な指先に。

繊細な心が分かるから、
優しいのが分かるから、
指先で、もっと撫でて。

008:月光
真夜中、明かりを消した部屋。
月明かりだけが彼女を照らす。

青白い光がぼんやりと、
彼女の輪郭を、描いた。

幻想的な光がやんわりと、
彼女の白い肌を、包んだ。

月光の下は、異世界のようで。
夢のように、彼女に見惚れた。

009:腕輪
彼女が手を動かすと、
それが、しゃらん、と小さな音を立てる。

彼女が手を動かすと、
それが、きらり、と控えめに光をはね返す。

彼女の腕で遊ぶ、3本の細い銀色の輪。
彼女のお気に入りの腕輪。

――僕にはそれが、手枷か手錠にしか見えない。

彼女がいとおしそうに、腕輪を指で撫でた。
それは彼女の彼氏からのプレゼントだった。

――彼女の心も体も、それに束縛されているのだ、と。

010:軌跡
世界は広い。
一生涯をかけても全てを見ることはできない。

時代は長い。
歴史は古く、終わりもまだ見えない。

人間は多い。
広い世界と長い時代を掛け合わせただけ人間はいる。

そんな中で。

あなたの人生が描く軌跡と、
わたしの人生が描く軌跡が、
今ここで交わっている奇跡。

やがて離れるのか、ずっと重なっていくのか、
それは分からないけれど。

今はゆっくり、歩いて行きましょ。
一緒にね。

011:封印
それは外と内の接触を断つ。

何かを外に出してはならないのか、
何かを開放してはならないのか、
何かを使ってはならないのか、
それは、危険な物を封じ込める為に行われる。

しかし、人間という愚かな生物はいつでも、
隠されたものは暴こうとし、
仕舞われたものは出そうとし、
禁忌とされたものは犯そうとし、

結果、その災厄を被る。

覆水は盆に返らず、
エントロピーは常に増大する。
後悔しても、もう遅い。

012:聖域
それは外界とは隔たれた、神聖なる領域。

隔たれているからこそ清らかで、
隔たれているからこそ神秘的で、
隔たれているからこそ成立する。

しかし、何らかの間違いが、そこに何かの侵入を許す。

瞬間、
そこは既に穢れていて、
そこに神秘は無くなり、
そこの意味は崩壊する。

一度侵された聖域は、もう二度と戻らない。

013:道標
それは道行く旅人に先の土地について教えた。
どれだけの旅人が教わり、救われただろうか。

遥か過去からここに存在しただろう。
遥か未来までここに存在するだろう。

その身が朽ちるまで、同じ事を教え続けるだろう。
先の土地が変われど、同じ事を教え続けるだろう。

人も通らぬ場所に残された、朽ちかかった道標。
今日も道を指し示す。役目を終えた事も知らず。

014:散歩
その時間になると、彼は私を誘う。
外に出よう、と。

彼は外を歩くのがとても好きなのだ。
日課にするくらい。

彼は、私に歩調を合わせてくれる。
たまに道を変えるけど。

彼は彼の知り合いとよく会うみたい。
私も彼らと仲良くなった。


彼と私にとってはどうでもいいことだけど。
彼と私は、どんな関係でしょう?

015:夕闇
気を付けなければならない。
いつの間にか忍び寄られる。
気付かないでいては危険だ。
それは悪魔の手なのだから。

最も物を視認しにくい時間。
まだ明るいと油断する時間。
最も事故の起きやすい時間。
夕闇は今日も獲物を求める。

016:夜風
夏祭りの帰り道。
先ほどまでの喧騒が嘘のように静まり返った道。
虫の音と私達の足音だけが響いていた。
はしゃいで火照った身体を、夜風が優しくゆっくり冷ましていく。
それが気持ち良くて、私は上機嫌。
そんな私を、彼はあきれたような、だけど優しい目で見ていた。
「やっぱり自然の風が一番気持ちいいよねっ!」
「じゃあ今日から、夜はクーラー無しで過ごそうか?」
「ああっ、それは無理!」
「都会じゃなければ、結構平気なものなんだけどね。」
郊外の彼の実家は、風通しもいい。
確かに夏の夜も過ごせるだろう。
でも明日からはまた、都会での生活が始まる。
こんなにも優しい夜風は、そこでは吹いてくれない。

017:雷鳴
彼女は泣きそうな顔で耳を塞いでいた。
外は大雨。典型的な、夕立という奴だ。
不意に閃光。彼女が短い悲鳴を上げた。
どうやら本当にとても凄く苦手らしい。
一瞬の間を置いて、空気を引き裂く音。
近い雷鳴はゴロゴロでなくバリバリだ。
ああこれは間違い無く近くに落ちたな。
傍で彼女が表記不明な泣き声を上げた。
とりあえず頭でも撫でて慰めてやろう。

本当は僕も、雷は苦手なんだけどなぁ。

018:異国
外見が違う。
文化が違う。
風習が違う。
言語が違う。

人間は、違う物を排斥する。
同時に、違う物を欲求する。

故に、異国を恐れ、
故に、異国を好む。

時にそれは災いを生み、
時にそれは奇跡を生む。

貴方はそんな遠方の地に、
どのような想いを馳せるのだろうか?

019:玉石
価値とは、多くは文化によって決まる物だ。
しかし必ずしもそれだけという物でもない。

本能的に人間は、光り輝くものを好むのだ。

例えばここに宝石と普通の石を散りばめる。
言わゆる玉石混淆という状態がこれである。

多くの人間が先に宝石に興味を抱くはずだ。
それが例え、宝石の価値を知らない者でも。

人間には煌くものを好む必然性があるのだ。

つまり結局僕が何を言いたいのかというと。
宝石より煌く君の瞳を見詰めていたいんだ。

020:刻印
私が印を刻み込むのを、彼女は不思議そうな目で見ていた。
どうやら彼女は私がどのような者であるか知らないらしい。

「何をしているの?」
「力ある印を刻んでいる。」

答えても何の事か分からないらしく、ますます首を傾げた。
知らずとも仕方あるまいか。この辺りでは一般的では無い。

「何が起こるの?」
「何も起こさないが、効果はすぐに分かる。」

2日後、一帯は大きな地震に襲われ、火事にも見舞われた。
そんな中、私が保護したこの家に大きな被害は出なかった。

「あなたは、何者なの?」
「刻印の魔術師だ。ルーンの使い手といえば分かるか?」

力ある刻印ルーンを刻み、守護の魔術を行使するのが私だ。
仕事を終えた私は残りの報酬を受け取り早々に立ち去った。

021:傷跡
彼女はそれをとても気にしているらしい。
教えてもらうまで全然気付かなかった、
小さな傷跡。
僕はあまり怪我を多くはしなかったけれど、
それでも彼女のよりは大きな傷跡が2つ、
残っている。
女の子が傷跡をすごく気にするのは多分、
完璧な美しさを求めているからだろう。
無意識でも。
彼女には言わないけど実は僕は思っている。
僕は完璧な物よりもちょっと欠けた物が、
好きなんだ。
その小さな傷跡を知った事でなおのこと、
僕は彼女をとてもとても愛おしく思う。
おかしいかな?

022:足枷
痛い。 重たい。
鼻につく鉄の臭い。
この苦しさを、
この不自由さを、
このもどかしさを、
どう表現しようか。

この理不尽さを、
呪いたくなる。
私が一体、
何をしたと?

「今日だけなんだろ? つらいとは思うけど、我慢しなよ。」

023:憎悪
何が理由かと言われればいろいろある。
だが。
そんな事はもはや、どうでもよい事だ。
憎い。
何が憎いと言われれば、答えは1つだ。
全て。
容姿も言動も仕草も性格も何もかもだ!
ああ!
それで誰が何と言おうが何を思おうが!
■■!
俺の前から、永遠に消えて無くなれ!!

024:病魔
見えない物が彼女を蝕む。

彼女はもう何年、闘っているのだろうか。
彼女がまた小さく咳をした。
彼女の辛さが、僕には分からない。
それがとても、もどかしい。
でももしも彼女と同じになったら、
僕は彼女を支えられない。
いや、今でも支える事ができているのか、
正直なところ分からない。
彼女は本当は何を望んでいるのだろうか。
して欲しい事は何だろうか。
いつも何を考えているのだろうか。
そればかりが気になる。

そんな僕は、別の病にかかっているのか。

025:愛憎

026:薬物

027:墓標

028:血痕

029:廃墟

030:崩壊

031:悪夢

032:眩暈

033:螺旋

034:禁忌

035:喪失

036:鳥籠

037:傀儡

038:亡骸

039:殺意

040:凶刃

041:楼上(ろうじょう)

042:灯台

043:砂漠

044:階段

045:高楼

046:浮島

047:都市

048:遺跡

049:天空

050:地下

051:魔法

052:機械

053:人形

054:主従

055:魔物

056:境界

057:奇矯

058:時間

059:荒廃

060:呪術

061:時計

062:喧嘩

063:継承

064:仮初(かりそめ)

065:彼方

066:失恋

067:予兆

068:失踪

069:咎人(とがびと)

070:刹那

071:復讐

072:胎動

073:左眼(さがん)

074:拒絶

075:迷路

076:物語

077:雨音

078:足跡

079:追憶

080:運命

081:回廊

082:細工

083:舞姫

084:占術

085:姫君

086:共鳴

087:泡沫(うたかた)

088:静寂

089:右手

090:相棒

091:一緒

092:綺麗

093:唯一

094:不死

095:破片

096:伝説

097:束縛

098:地図

099:別離

100:永遠

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