敏捷の欠片 --Agility--
遊戯の欠片くらいにしか入らなかった文章。
ゲームにおける素早さ・敏捷性というパラメータの戦力価値について。
RPGなどのゲームにおいて、素早さというパラメータの戦力価値判断は難しい、と自分はそこかしこで言っているが、そこをあえて突っ込んで語るというもの。
自分には盗賊系の能力は格下に強い、という持論があるが、盗賊系が高い能力として持つ素早さというパラメータもまた、どちらかというと格下に強い特性があると考える。
以下に、その持論を展開していくことにする。
素早さの戦力価値を語るその前に、そもそも素早さが高いことでどのような能力を得るか、という事から語らねばなるまい。
素早さというパラメータは、他のパラメータ、例えば筋力が高ければ攻撃力が高くなる、などという直感的に分かりやすいパラメータではない。
まずは素早さが高ければどのような能力を得るのか、に対する考えを並べてみる。
- ・先制行動
- 素早さの能力の代表格。ターン制バトルにおける行動順位の高さ。
- ・行動回数
- アクティブタイムバトルの行動後クールタイムの短さなど。
- ・回避力
- 敵の攻撃を当たらなかったことにして無効にする力。
- ・移動力
- 戦場を縦横無尽に駆け巡る移動速度の高さ。
では次から、各々の戦力価値について語ろう。
- ◆先制行動
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素早さの高い結果として、多くの人が思いつくのがこれだろう。ターン制バトルのRPGで、素早さが影響する最たるものだ。だが、先制行動の価値判断はなかなか難しい。
まず、単純な話から始めるとする。単純な殴り合いしかせず、必ず勝てる相手として、戦闘が何ターンかかるか、という差によって価値がどう変わるか、という話だ。
例えば2回殴れば勝てる相手として、先に殴るか後に殴るかでは、ダメージを2回受けて勝利するかダメージを1回受けて勝利するかという差がある。先制行動ができればダメージは半減する。
それが10回殴れば勝てる相手になると、先に殴るか後に殴るかでは、ダメージを10回受けて勝利するかダメージを9回受けて勝利するかという差になる。先制行動ができればダメージを1割減らせる。
長引けば長引くほど、割合的に大した差ではなくなる。つまり、早く倒せる相手であればあるほど、素早さの価値は高くなる。
しかし、早く倒せない相手でも、先制行動の価値が上がるケースがある。その1つ目が、相手との実力差が僅差であり、勝つか負けるかギリギリの勝負をする場合である。そうした場合、先に殴れる方が、勝つ。勝敗を分けるという、極めて価値のある能力となる。
ポケモンなど、勝つか負けるかギリギリの戦いを要求されるゲームにおいて先制行動の価値が上がる理由がそこにある。
それ以外に先制行動の価値が変わるケースは、行動に支障の出る状態異常を使用できたり、逆に使用されたりする場合である。
例えばサガシリーズのスタンなど、自分が先に行動できれば何の支障も無いが、相手が先に行動するととたんに厄介になる。そのような状態異常の使い合いは、先制行動できるほうが有利になる。
以上より、先制行動の価値は以下の場合に高くなる。
・相手が早く倒せる場合(相手の耐久力に対して自分の攻撃力が強い場合)
・勝つか負けるかギリギリの場合
・行動に支障の出るような状態異常を使用できる場合
・行動に支障の出るような状態異常を敵が使える場合
- ◆行動回数
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素早いことにより行動から次の行動までの間隔が短くなる。つまり、より多く行動できる。アクティブタイムバトルの行動後クールタイムの短さなどでお馴染みの考え方だ。
行動回数が多い、というのは単純に強い。強いが、その価値が高まるのはどのような場合だろうか。
強さというのは、大きく2つの力からなる。1つは、能動的な強さ。分かりやすく言えば、攻撃力など。自分が率先して行動を起こす、その行動の強さ。強力な回復魔法なども能動的な強さに含まれる。もう1つは、受動的な強さ。分かりやすく言えば、防御力など。相手の行動があることで現れる強さ。カウンターアタックの能力や、HPの高さなども受動的な強さに含まれる。
行動回数が多いということは、能動的な強さに優れるほど価値が高くなる。逆に言えば、耐久力や反撃能力に優れるキャラクターの行動回数が多くてもあまり高い価値にならない。
以上より、行動回数の価値は以下の場合に高くなる。
・攻撃力が防御力より優れる
・多彩な行動を持つ(単体攻撃も広範囲攻撃も回復もできる、など)
・特殊な行動を持つ(状態異常を引き起こす行動、など)
逆に、以下の場合は行動回数の価値は高くならない。
・防御力が攻撃力より優れる
・相手の行動に対するリアクションの行動を持つ(反撃能力など)
- ◆回避力
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素早いことにより敵の攻撃が当たりにくくなる。命中確率が重要になるシミュレーションゲームなどでよくある考え方だ。
回避力には大きく2つの考え方がある。1つは、一定の確率で攻撃を無効化するという考え方。もう1つは、相手の命中率を下げるという考え方。
どちらかと言えば前者は盾での防御的、後者は素早さ的なイメージがあると考える。
ゲームの例を出すと、前者はロマサガ・サガフロなどの盾の回避率であり、後者はファイアーエムブレムなどの速さの能力である。
戦力価値としては前者と後者では少し違っている。
前者はHPの価値に近い。例えば回避率50%(とても高い!)の盾であれば、それを持てばHPが2倍になったことに近い価値がある。
後者は相手の命中力に価値が大きく左右される。ファイアーエムブレム的な計算をする場合、回避50の能力を持っているとして、相手の命中が120%であれば、結果は70%となり、回避0の場合(100%命中)に比べて確率3割のダメージ軽減となる。一方、相手の命中が80%であれば、結果は30%となり、回避0の場合(80%命中)の場合に比べて確率にして6割以上のダメージ軽減となる。つまり、相手の命中が低いほど価値が高くなる。
相手が弱すぎると価値がオーバーして無意味になるが、そこまでであれば戦力価値を問うまでも無いだろう。
素早さ的なのは後者であると考えるので、素早さ的な回避力の価値は以下の場合に高くなる。
・相手の命中力が低い
また、相手の攻撃力が高い場合、防御力と比べて相対的に回避力の価値のほうが上がる、というケースはある。特に相手が低命中高火力の武器を持つ場合などに、防御力よりも回避力の価値が上がる。
- ◆移動力
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素早い=足が速い。これもシミュレーションゲームなどでしばしばある考え方だ。
そこにどのような価値があるかと言えば、移動力は状況によってさまざまな価値があり、例えば遠距離攻撃をしてくる相手に一気に近づいて叩いたり、壁役をかいくぐって後衛を叩いたり、他にも状況によって戦術の幅が広がる。
しかしながら、高い移動力を生かそうとする時は他の味方から孤立する必要がある場合が多く、ある程度の攻撃に耐えられなければ有効な手段とならない。また、単独でも短い時間で敵を倒せなければ有効な戦術とならないので、ある程度の攻撃力も必要である。
以上より、移動力の価値は以下の場合に高くなる。
・敵の攻撃にある程度は耐えられる防御力がある
・単独で敵を倒せる程度の攻撃力がある
つまり、格下相手の方が移動力を有効に機能させやすくなる。
と言った感じで、必ずしもというわけでは無いが、素早さというパラメータから得られる能力の価値が高くなるのは、相手が格下である場合の方が多い。例外的に、ギリギリの戦いをする場合には素早さが最後の決め手となる事はある。
あとは、素早さは防御的な能力より攻撃的な能力との相性がいい。逆に言えば、防御を固める事を重視する場合は素早さを捨てるデメリットが比較的低い。
これがすべてというわけでは無いが、素早さというパラメータの戦力価値について語ってみた。いかがだろうか?
-- Piece of Phantom --
composed by Phant.F
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